浮世絵に描かれている楽器の数々
浮世絵には、案外楽器が描かれているものがあります。
もちろん、今日のオーケストラのような近代的楽器は少ないですが、
日本の伝統的な楽器のすがたを、浮世絵を通して窺うことができます。
日本ならではの楽器、琴
水野年方 「三十六佳撰 琴のしらべ 弘化頃名古屋婦人」(1893)
今から約130年ほど前に、描かれた作品です。
タイトルに、弘化頃とありますが、弘化は1844年(1845年の記載もある) から1848年となっています。
美しい着物やかんざしが、豊かな暮らしぶりを感じさせ、
琴の美しい音が、いまにも聞こえてきそうですね。
琵琶の名手 藤原師長
月岡芳年 「宮路山の月 師長」
尾張に流罪になった藤原師長(ふじわらのもろなが)を描いた作品。
藤原師長は、平安時代末期の人物(1138-1192)で、琵琶の名手として名を遺しています。
師長が琵琶を弾くと、宮路山の水神がすがたを現したという言い伝えがあり、
作者、月岡芳年(1839-1892)は、約700年前の出来事を描いているというわけです。
三味線でしょうか。美しい婦人が二人描かれています。
水野年方 「三十六佳撰 初音 万治頃婦人」(1893)
本ブログで最初に掲げた琴の作品の連作でしょうか。同じ作者、水野年方のものです。
弾いているのは、三味線でしょうか?
右の女性の着物が、実にあでやかで、現代風の思い切った柄なのに感動しました。
本当にすてきな柄です。
万治とは、1658年から1661年をさしますので、最初の琴の作品とは、描いている対象の時代が異なります。
初音というのは、窓から見えているうぐいすのことでしょう、たぶん。
こちらも三味線のようです
楊洲周延 「二十四孝見立画合 第八号老来子」 (1890)
作者は江戸末期に生まれ、大正元年に亡くなった(1838-1912)浮世絵師です。
ようしゅう ちかのぶと読みます。
扇をもって踊る女性と、三味線を弾く女性の表情が生き生きと描かれています。
笛を吹く少年
月岡芳年 「原野月 保昌」
笛と言うと、ひな人形の五人囃子か、牛若丸を思い出します。
ここで描かれているのは、藤原の保昌です。
平安時代中期の貴族で、武勇にすぐれていることで知られています。
後ろにいるのは盗賊で、保昌の衣を盗もうと狙いますが、隙がない保昌に圧倒されてなにもできなかったと言われています。
保昌は、高名な歌人・和泉式部の夫としても知られています。
ちなみに、和泉式部の歌で私がもっとも好きなのは、
物おもへば沢の蛍も我が身よりあくがれいづる魂かとぞみる 和泉式部
暗きより暗き道にぞ入りぬべき遙かに照らせ山の端の月 和泉式部
です。
ビードロ(ポッピン)は楽器かどうかちょっと自信がありませんが
喜多川歌麿 「婦女人相十品・ビードロ(ポッピン)を吹く女」
たいへん有名な絵です。
市松模様の着物が、すばらしい。
ポッピンというか、「ビードロを吹く女」のほうが、私はなじみがありますが。
ガラス細工のおもちゃのようなものらしいです。
昔いちどいただいたことがあるような気がしますが、ぺこぺこ音を立てるんでしたかね。
作者・喜多川歌麿は、1853?-1806の人生を生きた浮世絵師です。