浮世絵に描かれている傘いろいろ
さて、私たちが日常的に使用している「傘」は「笠」と語源を同じくしているようです。
たしかに「かさ」という発音はいっしょですし、用途も似ています。
和傘のもとになる傘は、中国から伝わったと言われています。
伝来の正確な年代は不詳のようです。
平安時代、安土桃山時代と時代を経るにしたがって、制作技術も向上し、よりしっかりとしたものが作られるようになっていきました。
江戸時代に入ると、一般の庶民も使うようになりました。
和傘と洋傘
和傘は竹を使った軸・骨に、柿渋・亜麻仁油・桐油等を使って防水した油紙を貼って作られていました。
洋傘よりも骨の数が断然多く、美しい形状をなしますが、日常使いという点では、取り扱いが難しい部分がありました。
明治時代以降は洋傘の進出により、和傘の割合は大きく減少していくようになりました。
洋傘の歴史はきわめて古く、4000年ほど前にはすでに使用されていたとのことですから、本当に長い歴史をもっていますね。
開閉できる傘は、13世紀頃に作られ、その後、今日のように雨の日に使われる日常生活用具として普及するまでには、ある程度の時間がかかったようです。
それでは、日本の浮世絵に登場する傘を見てみましょう。
(すべての画像は、パブリックドメインから選択されています。)
歌川国貞「梨園侠客伝 御所の五郎蔵 四代目市川小團次」
歌川国貞は、18-19世紀にかけての浮世絵師です。
江戸時代ですね。桜の花びらが、ひらひらと舞い落ちています
小林清親 「海運協(第一銀行雪中)」1876
1876年は、明治9年です。
橋を渡る人のなかには、洋傘の人もいるように見えますがどうでしょうか。
明治6年(1873)に開業した第一銀行の立派な建物が描かれ、人々が傘をさして往来する様子が生き生きと写し出されています。
一番手前の女性の傘に、「岸田」「銀坐」の字が見えますが、これは目薬の店の宣伝らしいということでした。
水野年方 「三十六佳撰 花見 文政頃婦人」1893
1893年は明治26年ですから、明治時代に描かれた作品です。
しかし、絵のテーマは、花見をしている文政頃の婦人ということですので、昔を想って書かれたということですね。
つまり、絵の対象は、文政時代(1818-1831)、19世紀ということになります。
明治に入ると、洋傘が普及したと言われていますが、この作品は江戸時代を描いていますから、傘は和傘です。
背景の桜がとても美しい。
小原古邨 「雪中の柳橋」1927
こちらは、雪の日に傘をさして橋を渡る人を描いています。
20世紀、昭和初期の作品です。
傘は和傘のように見えます。広げた方の傘には、すっかり雪が積もっています。
柳橋の柳でしょうか、雪をかぶって白くなっています。
やはり浮世絵の題材としては和傘がなじむようです
着物を着ている人々を描く場合は、やはり傘は和傘がしっくりきます。
今回ご紹介した4点の作品も、ほぼみな和傘を優雅に、あるいは情緒たっぷりに描いています。
ここでひとつ西洋の作品をご紹介したいと思います。
ルイ・イカール 「ピンクのパラソル」
上掲の作品も、鮮やかなパラソルをさす女性のあでやかな雰囲気が伝わってきます。
最後の私の愛用傘をご紹介します (ごく普通の傘です)
下の写真の紺色にパンダの柄の傘は、私の持ち物ではなく、楽天で販売されているものです。
おしゃれな感じで、欲しくなりました。
IKEA(イケア)で購入した傘。価格は忘れてしまいましたが、コストパフォーマンス高い傘だったことは覚えています。
プレゼントしていただいた家紋傘(ちなみに、私の家紋ではありません・・)
持つところが、刀のようになっています。