浮世絵に描かれた馬の姿
今日、日本では馬に乗っている人を見ることは本当に少ないですね。
乗馬を趣味としている人もあまりいませんし、
乗馬を楽しめる施設も多くはありません。
私は、ずいぶん前に、東京のある馬場で
乗馬初心者コースというプログラムを受講したことがありまして、
確か7-8回くらい乗ったように思います。
オーストラリアでも一度乗りました。
初心者を乗せてくれる馬は、とてもよく調教されていて、
こちらの指示が下手でも、ちゃんと動いてくれます。
といっても、インストラクターが脇についていればの話で、
なにかでちょっとインストラクターが離れると、
急に、がーっと首を下げて草を食べて、こちらをびっくりさせたりします。
とても頭のいい動物だと思いました。
さて、日本でも昔は馬に乗って旅をしたり、
農耕を行なったりしていたのですよね。
その様子を浮世絵を通して、見てみたいと思います。
浮世絵は、すべてパブリックドメインからのものです。
東海道五十三次、広重が有名ですが北斎も描いています
葛飾北斎 「東海道五十三次 絵本駅路鈴 江尻」
東海道五十三次、江尻宿です。
旧清水市の中心部、現在の静岡市清水区に相当する地域だそうです。
葛飾北斎 「東海道五十三次 絵本駅路鈴 江尻」
とタイトルが付けられていました。
東海道五十三次は、歌川広重の作品が有名ですが、
葛飾北斎は広重より先に連作で描いています。
働く人の様子や、首を下げた馬が、とてもよく当時の状況を描写していると思います。
歌川広重「東海道五十三次 吉原 左富士」1833-1834
こちらは、広重の作品で、吉原宿を描いたものです。
吉原宿は、静岡県富士市に相当します。
松並木と左に見える富士山が、美しいですね。
馬は後ろから描かれています。
歌川広重 富士三十六景
歌川広重 「富士三十六景 上総鹿埜山」
笠をかぶった人に馬を引いてもらって、
馬上の人も馬引きも、眼前の富士山に見とれているのでしょうか。
馬の尾の様子が、目を引きますね。
現在の千葉県君津市に相当します。
葛飾北斎 富嶽三十六景
葛飾北斎「富嶽三十六景 東海道程ヶ谷
葛飾北斎の富嶽三十六景は、1831-34年(天保2-5年)の版行です。
東海道程ヶ谷は、現在の横浜市保土ヶ谷区に相当する地区ですが、
程ヶ谷/保土ヶ谷と、「ほど」の漢字が変化していますね。
絵の左側にいる駕籠かきのひとりは、草履のひもを締め直しているようです。
馬の尾は、ここでもくるっとなっていますので、
広重の左富士や上総の馬の尾と同じく、
当時はこういう書き方だったのでしょうか。
それともじっくり観察すると、こういう風に巻いているのかもしれません。
右端の僧侶は、反対側に向かって歩いています。
当時の旅する人々の様子が、よく分かる浮世絵です。